私達の行く先は天ではなかった。
第弐話 別火寿希の場合①
僕はお姉ちゃん、別火光(べっかひかる)が昔から苦手だった。お姉ちゃんのほうがなんでも優れていて、勉強だってスポーツだって、両親からの評価だって……僕よりお姉ちゃんの方がずっとだったんだ!
僕、別火寿希(ひさき)は愛想よくお姉ちゃんに接するように心掛けていた。
苦手だってことがバレないように、なるべくだけどそうしてた。
お姉ちゃんはよく僕に、僕の病気を全部治してやるから安心しててほしいって声をかけてくれる。
それを聞いた僕は全部期待してるフリをしてたけれど、本当ならお姉ちゃんの力なんか及ばないでほしかった。これだけならただの嫉妬だけど……。
だけど、何よりこんなことを思っちゃう最低な僕のためになんか頑張らないで欲しかったんだ。
お父さんとお母さんが営んでいるクリニックの跡継ぎだって、僕なんかじゃできっこないだろうから……お姉ちゃんは二人の跡を継いで人並みにお医者さんをやってくれたらそれで良かった。
苦手だけど嫌いではないから……だからこそ、僕に構わないで欲しかった。
何があったとしてもお姉ちゃんのことは嫌いになんてなりたくない。
別火寿希の場合①
2023/02/16 up