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希死意無ハウス

多分絵とかクソSSとか作る。

私達の行く先は天ではなかった。

第伍話 ミーティア・ファウストの場合⑤

「あの、お客様……」
私は店の営業が終了した後、先の文を持って本村さんに声を掛けます。
「……? あなたは確か占い師様の妹さん……? どうかなさいましたか?」
「ええ、私はミーティアと申します。この後、少し、お時間を頂けないでしょうか?」
本村さんは怪訝そうな顔をしながら時計に目をやり、しばし熟考した後、承諾してくださいました。
私は立ち話もなんですしということで、カフェへと本村さんを案内します。
「あの……今回はどうかしましたか?そろそろ教えてくださっても…」
「そう、ですね。私が口頭で伝えるよりも、この手紙を読んでくださればご理解頂けるかと思います」
私はストレートティーを飲み、それから一枚の手紙を渡し、読むように促します。

本村さんは読めば読むほどに顔を曇らせてゆきました。読み終えた本村さんは潤んだ目を隠すように目を伏せます。そして、信じられないといった顔でわたしの顔を見つめてくるのです。
「ミーティアさん、なん、ですかこれ……出禁ってこと、ですか……?」
「……はい。お客様は我が姉、コメートの目の前に居るべきではないと私が判断致しました。」
私は今朝の占いに後押しをされ、お姉様の知らぬところで身勝手な行動に出ることにしたのです。
本村さんは手紙を握りしめ、くしゃくしゃにしながら、感情を押し殺したように私に語ります。
「占い師様の話は楽しいです。占いだってその辺の占い屋の数倍当たっているように感じます。だからこそ私は占い師様の元へ通っているんです。通わないと私は……」
ガチャン。私は立ち上がります。
「邪魔なんですよ! お姉様は、お姉様はあなたに会うまでは私にかなり優しくしてくれました! なのに……。
本村様が居ると、お姉様は私に見向きもしてくれないんです。私はお姉様の隣には居られないんです。それが悔しくて悔しくて……」
カフェ内が静かになったことに気が付いて、私はそっと座ります。
「……声を荒げてしまい申し訳ございません。本村様、私は、お姉様の召し使いなどではなく、愛されたいだけのただの妹なのでございます……。
どうか、ご理解いただけないでしょうか?」
「……それでも、です。」
レモンティーを口にした本村さんは興奮した私を宥めるように言葉を紡いでいきました。
「私の辛い気持ちを軽くしてくれるのはあなたのお姉さんなんです。
コメートさんが店を閉めるまで、私は彼女の店に通い続けますよ。
私も、あなたと同じ気持ちです。大金を払ってでも私はコメートさんの道標を得たいのです。どうか、ご理解のほどを、お願いします。」
「……」
頭を下げた本村さんを見て、私は考えました。そして、このままでは、ファウスト家があまりにも幼稚であると感じられてしまうと、そう理解しました。
しかし、もう私に私を止める手立てはありませんでした。
「そう……ですか。わかりました、ええ。どんなに後悔しても、もう私には知らぬところでありますから。この言葉の意味をきちんと考えてくださいね。あぁ、お金は払っておきますので、どうぞごゆっくり。」
私は支払いをして髪を抜き、カフェを出ました。


ミーティア・ファウストの場合⑤

2023/02/16 up

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