Menu

希死意無ハウス

多分絵とかクソSSとか作る。

私達の行く先は天ではなかった。

第陸話 コメート・ファウストの場合②

私の妹の名はミーティア・ファウスト。自分の名前と共に、私が与えた由緒正しき名。
……しかし、流星(ミーティア)の如く急に消えていいなんて、誰が言ったのかしら。彗星(私)のおこぼれだからって、消えていい理由にはならないわ。
私は筋書き通りのことを考えて筋書き通りの台詞を唱える。
「私だって、あんたよりすごい魔法を使えるのよ。いつかあんたは『お姉様は私を召し使いみたいにする』って言ったわね。あんたよりすごい魔法を使えるから使うのよ。当たり前じゃない。そして、これからも。」

私には未来が見える。水晶を用いた占術とはまた別に、"魔法"として確実に当たってしまう未来が見える。私は毎朝、魔法の占いをして三日後の未来を観測してミーティアに適当に伝えていた。
私は数週間前、偶然、ミーティアが遺書を書くところを観測してしまったのだ。日付は書かれていなかったが、近い未来に実行することは容易に想像ができた。
でも、知ってさえいれば未来は変えられる。行動を起こせば、未来は変わる。
そして私は今日の昼、ミーティアに呪いをかけた。
それは「私が死ぬまで死ねない呪い」。
ミーティアが髪を抜く癖があったのは以前から知っていたから、人間の姿であっても、鶴としての遺伝子は残っているから。
私は髪を用いた"日本古来"の呪いで、ミーティアを死ねなくしたのだ。
私が死ぬまで、召し使ってあげないと。死ぬときは、私と一緒よ、ミーティア。

「見ているんでしょう? イチゴの」
私がそう呟いて数十秒、同じ赤髪の妖精が気だるそうに降りてきた。
「何よ、鶴女。あたしは『イチゴの』じゃなくて『ストベ』って名前があるんですけど。
で、あたしを呼び出して何がしたいワケ?」
「ミーティアを監視してて欲しいのよ。それだけ」
「な、妖精使い荒いわねあんた……なんであたしがそんなことしなくちゃいけないのよ」
はぁ、これだから理解力のないポンコツは。ミーティアの方がずっと使えるわ。
「大事な能力持ちが無駄死にして良いってのね、わかったわわかった。帰っていいわよ」
「ハァ? 駄目に決まってんでしょ、あたしたちの楽しみをなんだと思ってんの?」
ポンコツは適当に煽るに限る。
「じゃ、監視して死にそうになったら面倒だから適当にお話して止めておいてちょうだい」
「し、しっかたないわね……。でも、あたし一人じゃ面倒見きれないんだけど?」
いいのよ、それなりに頑張ってくれたらね。
そう言って私はイチゴのを妖精界に帰らせた。


コメート・ファウストの場合②

2023/02/16 up

Menu

上へ